【消費税】簡易課税の計算は、知識ゼロでもこんなに簡単です

消費税の納付税額は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて計算します。

納付税額の計算を税理士さんや経理スタッフ等にお任せしているのであれば、ご自身は事業に集中できるかもしれませんが、納付税額の計算をご自身でやるとなると、事業が疎かなってしまう可能性もあります。

そこで、一定規模以下の個人事業主や法人については、納付税額の計算を簡易な方法により行うことが認められており、この制度を「簡易課税制度」といいます。

この記事では、簡易課税制度について、知識が全くない方でも理解できるように、下記の順番にまとめました。どなたかのお役に立てれば幸いです。

  1. 消費税の原則的な計算方法
  2. 消費税の簡易課税の計算方法
  3. 簡易課税の適用を受けるための3つの要件
  4. 簡易課税の注意点

注)この記事は、平成28年5月1日現在の最新の消費税法に基づいて作成したものです。今後、消費税法に改正があった場合には、直ちに、この記事も更新し最新の状態を保って参ります(平成30年4月1日 更新)。

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1.消費税の原則的な計算方法

ここでは、「簡易課税制度」という例外的な制度を確認する前に、消費税の原則的な計算方法等を確認したいと思います。

現在の消費税の税率は8%ですが、この8%は、国税部分の6.3%と地方税部分の1.7%で構成されています。

そして、消費税の計算は、まず、国税部分の6.3%の税率を使用して国税部分の計算をします。

計算方法は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて納付する消費税(国税部分)を算出します。

預かった消費税の計算方法は、下記のとおりです。

① 今年(法人の場合は、今事業年度。)、ものを売ったり貸したりサービスの提供をして、受取った金銭等を税込み価格の状態で集計します。

② 集計した税込み価格を税抜価格にして、1,000円未満の端数を切り捨てます。この1,000円未満の端数を切り捨てた後の金額を「課税標準額」といいます。

③ 課税標準額に6.3%を乗じて、円未満の端数を切り捨てます。

この方法で計算した、預かった消費税を「課税標準額に対する消費税額」といいます。

支払った消費税の計算方法は、下記のとおりです。

① 今年(法人の場合は、今事業年度。)、ものを買ったり借りたりサービスの提供を受け、支払った金銭等を税込み価格の状態で集計します。

② 集計した税込み価格に6.3×108を乗じて、円未満の端数を切り捨てます。

この方法で計算した、支払った消費税を「控除対象仕入税額」といいます。

預かった消費税(課税標準額に対する消費税額)と支払った消費税(控除対象仕入税額)の計算が終了したら、納付する消費税(国税部分)を計算します。納付する消費税(国税部分)の計算方法は下記のとおりです。

① 預かった消費税(課税標準額に対する消費税)から支払った消費税(控除対象仕入税額)を差し引いて、100円未満の端数を切り捨てます。

ここで、個人事業主の今年(平成30年1月1日から平成30年12月31日)の納付する消費税(国税部分)を、下記の(具体例 1)を使用して計算してみたいと思います。

(具体例 1)

納税義務がある、小売業を営む個人事業主の今年(平成30年1月1日から平成30年12月31日)の取引の状況

商品売上高 12,960,000円(税込み)

車両の賃貸し料 388,800円(税込み)

商品仕入高 6,480,000円(税込み)

商品陳列棚の購入代 324,000円(税込み)

① 課税標準額

(12,960,000円+388,800円)×100/108=12,360,000円(1,000円未満切り捨て)

② 課税標準額に対する消費税額

12,360,000円×6.3%=778,680円(円未満切り捨て)

③ 控除対象仕入税額

(6,480,000円+324,000円)×6.3/108=396,900円(円未満切り捨て)

④ 納付する消費税

②-③=381,700円(100円未満切り捨て)

この納付する消費税が、消費税の国税6.3%部分です。

消費税の国税6.3%部分の計算が終了したら、次は、消費税の地方税1.7%部分の計算です。

地方税部分の計算は複雑ではありません。上記で計算した納付する消費税(国税部分)に17/63を乗じて、100円未満の端数を切り捨てるだけで終了です。

ここで、上記の具体例で計算した納付する消費税381,700円(国税部分)を使用して、地方税部分の計算をしてみたいと思います。

(算式)

381,700円×17/63=102,900円(100円未満切り捨て)

地方税部分の計算はこれだけです。

そして、計算した国税部分の消費税381,700円と、地方税部分の消費税102,900円を合計した484,600円について、消費税の確定申告をして納税することになります。

ここまでのところで、消費税の原則的な計算方法等について確認しましたが、消費税の仕組みや計算方法の詳細については下記の記事にまとめてありますので、よろしければご覧下さい。

【消費税】納付税額の計算は、知識ゼロでもこんなに簡単です

2.消費税の簡易課税の計算方法

ここからは、簡易課税制度について確認したいと思います。

簡易課税制度(以下、「簡易課税」と省略。)の計算と、上記で確認した原則的な計算とでは、支払った消費税の計算方法が 異なります。

原則的な計算方法では、支払った消費税は、

① 今年(法人の場合は今事業年度。)、ものを買ったり借りたりサービスの提供を受け、支払った金銭等を税込み価格の状態で集計します。

② 集計した税込み価格に6.3×108を乗じて、円未満の端数を切り捨てます。

という方法で計算しますが、

簡易課税の計算方法では、

① 預かった消費税(課税標準額に対する消費税額)に「みなし仕入率」を乗じて、円未満の端数を切り捨てます。

という方法で計算します。

なお、「みなし仕入率」は業種ごとに定められており、業種は下記の6つに区分されています。

業種ごとのみなし仕入率

① 第一種事業(卸売業) 90%

② 第二種事業(小売業) 80%

③ 第三種事業(製造業等) 70%

④ 第四種事業(その他の事業) 60%

⑤ 第五種事業(サービス業等) 50%

⑥ 第六種事業(不動産業) 40%

第一種事業の卸売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業をいいます。

第二種事業の小売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業で、第一種事業以外のものをいいます。具体的には、消費者に対して商品を販売する事業が第二種事業に該当します。

第三種事業の製造業等とは、製造業・農業・林業・漁業・鉱業・製造業・電気業・ガス業・熱供給業・水道業等の事業をいいます。

第四種事業のその他の事業とは、第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業、第六種事業以外の事業で、飲食店業・事業用固定資産の売却等の事業をいいます。

第五種事業のサービス業等とは、サービス業(飲食店業を除く)・運輸通信業・金融業・保険業等の事業をいいます。

第六種事業の不動産業とは、不動産の賃貸し、管理、仲介等を行う事業をいいます。

ここで、上記の(具体例 1)をもう一度使用して、簡易課税の計算をしてみたいと思います。

(具体例 1)

納税義務がある、小売業を営む個人事業主の今年(平成30年1月1日から平成30年12月31日)の取引の状況

商品売上高 12,960,000円(税込み)

車両の賃貸し料 388,800円(税込み)

商品仕入高 6,480,000円(税込み)

商品陳列棚の購入代 324,000円(税込み)

① 課税標準額

(12,960,000円+388,800円)×100/108=12,360,000円(1,000円未満切り捨て)

② 課税標準額に対する消費税額

12,360,000円×6.3%=778,680円(円未満切り捨て)

③ 控除対象仕入税額

(小売業なので、みなし仕入率は80%)

778,680円×80%=622,944円(円未満切り捨て)

④ 納付する消費税

②-③=155,700円(100円未満切り捨て)

この納付する消費税が、消費税の国税6.3%部分です。

簡易課税の計算では、商品仕入高と商品陳列棚の購入代の金額を使用しませんでした。

つまり、簡易課税では、ものを売ったり貸したりサービスの提供をして受取った金銭等(具体例では、商品売上高と車両の賃貸し料)のみを正しく集計しておけば計算ができてしまうのです。

ものを買ったり借りたりサービスの提供を受けて支払った金銭等(具体例では、商品仕入高と商品陳列棚の購入代)を集計する必要はありません。

さらに、原則的な計算方法では、(具体例 1)で、納付する消費税(国税部分)が381,700円でしたが、簡易課税の計算方法では155,700円です。簡易課税を選択すると、納付する消費税を国税部分だけで226,000円(381,700円−155,700円)削減できます。

なお、地方税1.7%部分の計算は、原則的な計算方法と同じです。

上記で計算した納付する消費税(国税部分)に17/63を乗じて、100円未満の端数を切り捨てるだけで終了です。

ここで、上記の(具体例 1)で、簡易課税の方法により計算した納付する消費税155,700円(国税部分)を使用して、地方税部分の計算をしてみたいと思います。

(算式)

155,700円×17/63=42,000円(100円未満切り捨て)

地方税部分の計算はこれだけです。

そして、計算した国税部分の消費税155,700円と、地方税部分の消費税42,000円を合計した197,700円について、消費税の確定申告をして納税することになります。

原則的な計算方法では、(具体例 1)で、納付する消費税(国税部分+地方税部分)が484,600円(381,700円+102,900円)でしたが、簡易課税の計算方法では、197,700円(155,700円+42,000円)です。

(具体例 1)では、簡易課税を選択すると、納付する消費税を286,900円(484,600円−197,700円)削減することができます。この286,900円は「益税」といい、事業用資金として自由に使用することができます。

このように、簡易課税を選択すると、税額計算の手間が省けたり、納付税額を削減できる等のメリットがあります。

ただし、原則的な計算方法で計算したほうが、納付税額が少なくなる場合もありますのでご注意下さい。

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3.簡易課税の適用を受けるための3つの要件

簡易課税の適用を受けるには、下記の3つの要件を満たさなければなりません。

① 納税義務があること

② 基準期間における課税売上高が5,000万円以下であること

③ 「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署に提出していること

1つめの要件、① 納税義務があることについて、消費税の確定申告と納税をする義務(納税義務)がなければ、納付税額の計算をする必要がありません。したがって、納税義務があることが1つめの要件となります。

納税義務の判定は、前年以前の、ものを売ったり貸したりサービスの提供をして受取った金銭等(以下、「売上げ等」と省略。)を使用して、原則として二段階により行います。

一段階目は、個人事業主の今年の納税義務は前々年の売上げ等が1,000万円以下かどうかにより、法人の今事業年度の納税義務は前々事業年度の売上げ等が1,000万円以下かどうかにより判定します。

なお、この個人事業主の前々年及び法人の前々事業年度のことを「基準期間」といいます。

例えば、個人事業主の今年(平成30年1月1日から平成30年12月31日)の納税義務は、基準期間(平成28年1月1日から平成28年12月31日)の売上げ等が1,000万円以下かどうかにより判定します。

また、事業年度が4月1日から3月31日までの法人の今事業年度(平成30年4月1日から平成31年3月31日)の納税義務は、基準期間(平成28年4月1日から平成29年3月31日)の売上げ等が1,000万円以下かどうかにより判定します。

基準期間の売上げ等が1,000万円を超えれば、今年(法人の場合は、今事業年度。)は納税義務があります。

基準期間の売上げ等が1,000万以下の場合、二段階目の判定を行ないます。

二段階目は、個人事業主の今年の納税義務は前年1月1日から6月30日までの期間の売上げ等が1,000万円以下かどうかにより、法人の今事業年度の納税義務は前事業年度開始の日以後6月の期間の売上げ等が1,000万円以下かどうかにより判定します。

なお、この個人事業主の前年1月1日から6月30日までの期間及び法人の前事業年度開始の日以後6月の期間のことを「特定期間」といいます。

例えば、個人事業主の今年(平成30年1月1日から平成30年12月31日)の納税義務は、一段階目は、基準期間(平成28年1月1日から平成28年12月31日)の売上げ等が1,000万円以下かどうかにより判定し、1,000万円を超えれば納税義務があり、1,000万円以下の場合は、二段階目の判定をします。

二段階目は、特定期間(平成29年1月1日から平成29年6月30日)の売上げ等が1,000万円以下かどうかにより判定します。特定期間の売上げ等1,000万円を超えれば納税義務があり、1,000万円以下の場合は納税義務がありません。

また、事業年度4月1日から3月31までの法人の今事業年度(平成30年4月1日から平成31年3月31日)の納税義務は、一段階目は、基準期間(平成28年4月1日から平成29年3月31日)の売上げ等が1,000万円以下かどうかにより判定し、1,000万円を超えれば納税義務があり、1,000万円以下の場合は、二段階目の判定をします。

二段階目は、特定期間(平成29年4月1日から平成29年9月30日)の売上げ等が1,000万円以下かどうかにより判定します。特定期間の売上げ等1,000万円を超えれば納税義務があり、1,000万円以下の場合は納税義務がありません。

ここで、個人事業主の今年(平成30年1月1日から平成30年12月31日)の納税義務の判定を、下記の(具体例 2)を使用して行ってみたいと思います。

(具体例 2)

小売業を営む個人事業主の基準期間(平成28年1月1日から平成28年12月31日)の取引の状況

商品売上高 10,100,000円(税込み)

営業用車両の売却代 900,000円(税込み)

納税義務の判定方法は、下記のとおりです。

① 基準期間の売上げ等を税込み価格の状態で集計します。

② 集計した税込み価格を税抜き価格にして、円未満の端数を切り捨てます。

③ 計算した金額が1,000万円以下かどうかを判定します。

(算式)

① 10,100,000円+900,000円=11,000,000円

② 11,000,000円×100/108=10,185,185円(円未満切り捨て)

③ 10,185,185円>10,000,000円

③が1,000万円を超えるため、今年は納税義務があります。

したがって、平成30年分の消費税の確定申告と納税をしなければなりません。

なお、この売上げ等を税抜価格にして、円未満の端数を切り捨てた後の金額を「基準期間における課税売上高」といいます。「基準期間における課税売上高」という言葉は、この後も使用しますので覚えておいて下さい。

2つめの要件、② 基準期間における課税売上高が5,000万円以下であることについて、納税義務の判定で使用した基準期間における課税売上高をもう一度使用します。5,000万円以下とすることで、簡易課税の適用を小規模な事業者(個人事業主や法人)に限定しています。

3つめの要件、③ 「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署に提出していることについて、この届出書は、簡易課税の適用を受けたい年(法人の場合は、事業年度。)の前年(法人の場合は、前事業年度。)までに提出しなければなりません。

例えば、個人事業主が今年(平成30年1月1日から平成30年12月31日)簡易課税の適用を受けたいのであれば、平成29年12月31日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。

注)「消費税簡易課税制度選択届出書」は、国税庁の公式サイトからダウンロードすることができます。

国税庁公式サイト(「消費税簡易課税制度選択届出書」のダウンロード)

注)納税地の所轄税務署は、国税庁の公式サイトで確認することができます。

国税庁公式サイト(納税地とは)

国税庁公式サイト(納税地の所轄税務署の確認)

ここで、個人事業主が今年(平成30年1月1日から平成30年12月31日)簡易課税の適用を受けることができるかどうか、下記の(具体例 3)を使用して確認してみたいと思います。

(具体例 3)

小売業を営む個人事業主の基準期間(平成28年1月1日から平成28年12月31日)の取引の状況

商品売上高 43,200,000円(税込み)

営業用車両の売却代 2,160,000円(税込み)

※平成29年12月1日に「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署に提出した。

① 納税義務の判定

a. 43,200,000円+2,160,000円=45,360,000円

b. 45,360,000円×100/108=42,000,000円(1,000円未満切り捨て)

c. 42,000,000円>10,000,000円

② 基準期間における課税売上高が5,000万円以下かどうかの判定

42,000,000円≦50,000,000円

③ 「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出の有無

平成29年12月1日に提出している

①〜③の要件を満たすため、この個人事業主は、今年(平成30年1月1日から平成30年12月31日)簡易課税の適用を受けることができます。

4.簡易課税の注意点

上記の3つの要件を満たした場合、必ず簡易課税の方法により納付税額を計算しなければなりません。

たとえ原則的な方法で計算したほうが納付税額が少なくなる場合であっても、簡易課税の方法で納付税額を計算しなければなりません。

また、簡易課税の適用をやめて原則的な方法で納付税額を計算したい場合、やめたい年(法人の場合、事業年度。)の前年(法人の場合、前事業年度。)までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。

注)「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」は、国税庁の公式サイトからダウンロードすることができます。

国税庁公式サイト(「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」のダウンロード)

なお、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した年(法人の場合、事業年度。)の翌々年(法人の場合、翌々事業年度。)以降でなければ提出することができません(特別な事情がある場合を除く。)。

例えば、個人事業主が平成29年に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出できるのは、平成31年以降になります。そして、平成31年に提出しても、簡易課税をやめることができるのは平成32年からです。この場合、平成30年と平成31年は、上記の3つの要件を満たす限り、簡易課税の方法により納付税額を計算しなければなりません。

つまり、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合、最低でも2年間は、上記の3つの要件を満たす限り、簡易課税の方法により納付税額を計算しなければならないことになります。

したがって、ご自身にとって、原則的な方法により納付税額を計算したほうが有利なのか、または、簡易課税の方法により納付税額を計算したほうが有利なのか、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する前にしっかり考えなければなりません。

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